

桃山時代の色−赤と金
桃山時代をいろどる象徴的な色は、紅と金である。あふれるような紅の濃淡で処理された梅や桜の文様。鮮やかな刺繍の地間に摺りつめられた金銀の箔。明るく迫力にみちた意匠は、旺盛な行動力を特色とする桃山期にふさわしいものだった。宣教師ジョン・ロドリゲスは「衣類に模様を描くことにおいて日本人は偉大な職人であって、いろいろな描き方をした花の間に金糸を縫い込む。彼らは緋色を使うことですぐれており、さらに赤紫色を使うことでひときわすぐれている」と記している。
茜草で染めた緋(あけ)は、飛鳥・奈良時代には太陽の輝きの象徴として尊ばれた。平安時代になると、紅花で染めた紅染が王朝風のはなやぎに適う色として流行する。濃い紅色は高位の人にだけしか着用が許されない禁色でもあった。一方、浄土の荘厳を表す金が染織物に使われるようになるのは室町時代。金・銀襴の織物や金箔、銀箔を貼りつける縫箔や摺箔の技術によって、豪華な衣装がつくられるようになった。
またこの時代に伝わったコチニールという虫の染料で染めた深紅のビロードは、猩々(しょうじょう)という架空の動物の血で染めた呪力のある織物という信仰を生み、戦国武将のあいだで珍重された。武士たちが多く赤を身に付けたのはまた、赤が象徴する高貴性とともに、とにかく合戦の場で人目をひくためでもあった。
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