中興名物



小堀遠州はたんに茶人としてだけでなく、建築家、造庭家、陶芸家、書家などさまざまな肩書きをもち、しかもすべてが一家をなすほどの才人であった。また王朝的な貴族文化にあこがれ、和歌の素養も深く、こうした傾向は彼の茶風にも現れて「きれいさび」と称された。
また、遠州にはこれらに加えて鑑定家としての才能もあった。利休以前の唐物茶器をとくに「大名物」というが、利休以後の名物に利休以前の未発見の唐物、また和物の古瀬戸などを含めて鑑定し、すぐれたものを「中興名物」と認定したのである。認定された名物は、すべて遠州の好みを反映し、華やかななかにも気品が漂ったものが多い。また、そのひとつひとつにふさわしい歌銘を、『古今集』以後の勅撰和歌集のなかから選んでつけているのが特徴である。
例を挙げると、「音羽山」という茶杓には「音羽山おとにききつつ逢坂の関のこなたに年を経るかな」(『古今集』在原元方)という和歌から、「一本(ひともと)」という茶入には「紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る」(『伊勢物語』古歌)という和歌から本歌取りしたものである。ここには、珠光・紹鴎を経て、利休によって大成された侘び茶のもつ緊迫感とは異なる、繊細で優雅な遊び心が溢れている。


関連図版: 置紋 瀬戸大海茶入 奥田 伯庵茶碗 橋姫 志野茶碗 玉川 志野竹の子文茶碗
 
解説: 千利休 古田織部 小堀遠州 きれいさび 孤蓬庵 破格の茶 燕庵 草庵茶室 待庵 武野紹鴎 四畳半茶室 村田珠光 佗び数奇 大徳寺 不審庵 千宗旦 茶禅一味 北野大茶会 豊臣秀吉 黄金の茶室 茶の湯前史 東山御物 唐物 高麗茶碗 楽焼 織部焼 織田信長 名物狩り


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