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戦国時代の記録(3)『雑兵物語』
私たちは、戦争というものは大将や高級武将だけで行なうものではなく、むしろ最下層の兵卒である雑兵の働きに負うところが大きいことをつい忘れてしまうようです。じっさい、ひとりの身分ある武士が出陣するにさいして、弓足軽、鉄砲足軽、槍担ぎ、馬標(うまじるし)持ち、旗持ち、草履取り、挟箱持ち、馬取り、矢箱持ち、玉箱持ち、食料運搬係り、そのほか若党、中間(ちゅうげん)といった人員が必要であることに思い至れば、華やかな合戦とは異なる労苦が、おのずとイメージされてくるはずです。
『雑兵物語』(岩波文庫版あり。現在品切れ)は全二巻からなり、松平信興ほか数名の著者候補がいるものの、定説はありません。明暦3年以降天和3年以前の間の成立と考えられているので、関ヶ原の戦からは半世紀以上の年月が経っています。しかし、関ヶ原の戦を裏で支えた雑兵30名の功名談、失敗談、見聞などの形式を借りて、陣中の心得、武具の取り扱い、兵器の操作、またあるいは戦場の駆け引き、食料補給、救急医療といった、まさに戦さにおけるノウハウが平易かつ直裁に記されています。高級武将の戦陣訓や軍学書、また大げさな戦記物語ではなく、底辺に位置した者の視線で語られた貴重な記録といえましょう。
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