[ウェブマガジン] WEB MAGAZINE vol.007



第4回「芝居・美術と和傘」


01 芝居に登場する傘
02 浮世絵に描かれた傘
03 現代美術と傘


現代美術と傘


最後に、現代のアートシーンにあらわれた傘について触れておきましょう。現代美術家クリストといえば、梱包芸術のアーティストとして日本でもよく知られています。布やビニールなどで巨大な建築から海岸、島といった自然環境までを包み込む作品で有名です。
1991年、このクリストが「アンブレラ、日本とアメリカ合衆国のためのジョイント・プロジェクト」という作品をロサンジェルスと茨城県で展開しました。アメリカでは黄色、日本では青色のおびただしい傘が丘陵、田園、道路を覆い尽くし、たいへん話題を呼びました。(1)
しかし、クリストほど有名ではないかも知れませんが、ドイツのアーティスト、ステファン・クーラーはなんと和傘、それも先に紹介した藤沢商店の蛇の目傘を使ったパフォーマンスを行ない、これも大いに話題となりました。両者の違いは、クリストの場合、普通に傘をさす状態、すなわち傘の頭が上を向いていますが、クーラーの場合は傘の上下をさかさまにした状態で水に浮かべるといった使い方をしたことでしょう。(2)
1995年8月6日は、広島に原爆が投下されて50周年という節目の日でしたが、この日のイヴェントのためにクーラーは1000本の傘を用意しました。すべて藤沢商店で制作した「美濃和傘」です。最終的には大体400本の傘を川に浮かべただけでしたが、蛇の目が川を流れゆく印象的なシーンは人々に鮮烈な記憶を植え付けたようです。日本の伝統的な和傘が、現代美術という今日的な場を借りて見事に甦った瞬間でもあったのです。



01- 02- 03
バックナンバー