[ウェブマガジン] WEB MAGAZINE vol.007

「岐阜の和傘」シリーズ 第4回「芝居・美術と和傘」


01 芝居に登場する傘
02 浮世絵に描かれた傘
03 現代美術と傘


さて、これまで和傘の歴史、種類、作り方などを順におはなししてきましたが、今回で最後となります。そこでこれまでとはいささか趣をかえて、歌舞伎に登場する傘、浮世絵に描かれた傘、現代美術と傘など、絵になる傘の話題で締めくくりたいと思います。


芝居に登場する傘


戦後の歌舞伎界を支えた名女形・中村歌右衛門さんが亡くなったことは記憶に新しいことですが、一方で尾上辰之助が四代目松緑を、市川新之助が十一代目海老蔵を、また中村勘九郎が十八代目勘三郎を、さらには関西歌舞伎の中村鴈治郎が230年ぶりに四代目坂田藤十郎を襲名するとの発表が先日行なわれ、新世紀の歌舞伎界も話題には事欠かないようです。
歌舞伎界の襲名披露にふれたのは、じつは傘というものが歌舞伎の舞台では重要な小道具として活躍していることを紹介したいからなのです。
歌舞伎と傘といえば、だれもが思い浮かべるほど有名な「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」を挙げないわけにはいかないでしょう。花道の出端(では)に、助六が蛇の目を高々とかざし、それを見上げて見得を切るかっこよさはいつの時代でも人気を博しました。また、助六同様名高いのが「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」、通称「白波五人男」でしょう。ここでは傘の柄が一尺ほど長く、開きも水平近くにして役者の顔がよく見えるよう工夫してあります。本来、目立つことは避けたい盗人の男たちが、風流で、伊達でかっこいいからという理由だけで、ひときわ目立つ傘をもつ・・・・・・。派手な衣装に傘という小道具の効用が、粋の美学を如実に物語っているようです。(写真1、2)

歌舞伎活性化の旗手として人気の高い市川猿之助は、派手な宙づりなどのスペクタクルシーンを得意としますが、こうした仕掛けや演出は歌舞伎が古くから得意としてきたことです。十数年前に復活公演された「遇曾我中村(さいかいそがなかむら)」という演目では、なんと傘をもった桜姫が清水の舞台から飛び降りるシーンがあります。傘をさし、ふわふわと時間をかけて舞台へ舞い降りる様子はなんとも優雅で美しいものですが、むかし見たミュージカル映画、洋傘をさして空から舞い降りてくる「メリーポピンズ」のシーンを思い浮かべてしまいました。
そのほかにも、「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」の髪結新三と白張りの番傘、「傘づくし」の台詞、「鏡山旧錦絵」や「牡丹灯籠」での殺しの場面における傘、「仮名手本忠臣蔵」五段目で破れ傘をもつ定九郎などなど、傘が演出する忘れがたい場面は枚挙にいとまがありません。(写真3)



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